消極的に一直線。【完】
バレンタインの時もそうだった。

真内くんには、すぐにバレてしまう。



ふっと真内くんが短く息を吐いて、私の頭から手を退けた。



見上げると、真内くんは表情を変えないまま歩き出す。




何だろう、と思った次の瞬間に。

ポンと真内くんではない誰かの手が頭に乗った。




「おはよ」



トクン、と。
降ってきた声に、反射的に鼓動が反応する。



見上げなくてもわかる、颯見くんの声。



触れられた頭から感じる温かい温度が、熱となって鼓動を速める。



「おはよう」



言いながらそっと見上げると、想像通りくしゃりと笑った颯見くんの顔があった。



スッと頭から手が離れて、名残惜しさを感じる。



こんなひとつひとつのことに、私ばかりが意識しているなんて、颯見くんは思ってすらいないんだろうな。



声をかけたり、触れたり、笑いかけたり。

そんなこと、颯見くんには普通のことで、だれにでもやること。



放課後二人で補習した日にも、それを強く理解した。



それなのに、私の心はまた都合良く期待しようとする。
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