消極的に一直線。【完】
「あ。嵐がまた来たな」



斜め前の席で朝羽くんが呟いた。


それを、耳がキャッチすると、さっきまで渦巻いていたものが消えた。



パッと廊下の方へ目を向けると、教室のドアの枠に手をかけてくしゃっと笑う、颯見くんがいた。


その姿を目に捉えた瞬間に、胸の中で何かが湧き立った。



「カズ！　体育祭の種目、何？」



そう言いながら、朝羽くんの席へ近づく颯見くん。

必然的に、私と颯見くんとの距離も近づいていく。



「リレーだよ」



朝羽くんが答えると、颯見くんは「だと思った」と言って笑った。



「嵐は？」


「リレー。ちなみに鈴葉もな」


「やっぱり」



すらすらと連なる会話を聞きながら、リレーに出るなんてやっぱりすごいなぁ、なんて思った。



私は走るのが遅いから、リレーは大嫌いだった。

せっかく、前の順番の人が、何人か他の子を追い抜かしても、私にバトンが回ると、全部追い抜かされてしまう。

迷惑をかけてしまうから、リレーなんて絶対に選べない。
< 31 / 516 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop