消極的に一直線。【完】
だけど、それは本当に幻で、すぐに胸の温度が下がる。



何年も前から、って、私と颯見くんは出会ってからまだ一年も経っていない。



脚が、まるで宙に浮いたみたいに感覚を失っていく。



さっきまでザワザワと揺れていた木の葉が、妙に静かに聞こえた。



そっか。

颯見くんは、鈴葉ちゃんのことを話してたんだ。



鈴葉ちゃんのことを、好きだと言ってたんだ。



一瞬でも自分のことかもしれないなんて期待して、どこまでも恥ずかしい。



私は、釘を刺されてたんだ――。
< 327 / 516 >

この作品をシェア

pagetop