消極的に一直線。【完】
――――……



昼ご飯は十分で食べ終わるように、という体育委員の大西さんの一声によって、昼休み十五分後、私とクラスメートは運動場に立っていた。



「じゃあ、それぞれ練習始めてねー」



大西さんが言うと、ぎゅっと集まっていたクラスメートが、それぞれに広がっていった。



私も、ムカデ競争の自分のグループに向かう。


寺泉さんと、体育委員の大西さんと、大西さんとよく一緒にいる笹野さんと佐藤さん。

ムカデ競争のグループが揃った。



「並ぶ順番、どうする?」



大西さんが、ムカデ競争の板を地面に置いて、言った。



「適当でよくない?」



内巻きの髪を指で触りながら寺泉さんが答えると、大西さんは「だね」と言って制服のポケットから鏡を取り出し前髪を触りだした。



「ほんと大西は女子力高いよねー!」



そう言いながら、笹野さんが自分のサラサラの黒髪をキリッと後ろに結ぶ。



「そういう笹野は男前すぎるの!」



そう言って佐藤さんがフワフワの茶髪を揺らしながら笑った。



「早く練習しようよ」



寺泉さんが地面に置かれたムカデ競争の板を持ち上げると、「オッケー」と大西さんがそれを受け取る。



たった五人の空間で、私以外の会話が綺麗に流れていく。



私も何か発言しないといけないような気がして、少し緊張する。



「んじゃ、勝手に順番決めるね」



寺泉さんが一人ずつ指をさして、一番、二番……と決めてくれた。



その順番通り、寺泉さん、大西さん、笹野さん、佐藤さん、私の順番に、縦に並ぶ。



ムカデ競争の板を足にくくりつけて、前の佐藤さんの肩に手を当てた。
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