消極的に一直線。【完】
長い廊下はどんどん人で賑わっていく。



楽しそうな笑い声。

ふざけ合う会話。

元気に駆ける靴音。



高確率で誰かが颯見くんに声をかけたりして、私だけ別世界にいるような気持ちになる。




颯見くんとは同じ距離を保ったまま、目的の保健室へと続く階段を降りた。



前、颯見くんと二人で来た時とは全然違う空気。



ただ一人浮かれていたあの時の自分が恥ずかしくなって、蘇りそうになった記憶を振り落とした。




保健室の前まで来ると、私がドアに手を延ばす前に、颯見くんがそれに手をかけた。



「せんせー、すみませーん」



ドアを開けて中に入っていく颯見くんに続いて、私も中へ入る。



中に入って左を向けば、すぐ視界に入る、先生の机と椅子。



だけど、いつも座っているその椅子に先生の姿はなくて、辺りを見回した。
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