消極的に一直線。【完】
「留守、か」



独り言のように呟いた颯見くんが、ガラガラ、とドアを閉めた。



保健室の中。
ドアを背にして、距離を空けたまま並んで立ち尽くす私と颯見くん。



息をするのもためらわれるような、気まずい空気が漂う。







「哀咲、」



隣から不意に名前を呼ばれて、心臓が高鳴った。



「大丈、夫?」



気まずさの中に感じる優しい声色に、また勘違いをしてしまうんじゃないかというぐらい、鼓動が跳ねる。



「今日、だけは、ごめんな。でも、心配だから」



少し歯切れの悪い声が優しく響いて、俯いたままの私の額に、スッと手が当たった。



ハッとして思わず顔を上げると、手の温度を感じる前に、またスッと離れるそれ。



一瞬の出来事だったのに、脈はこれでもかというぐらい主張を始める。



「熱は、ない、のかな。あんまわかんねーな」



はは、と笑いかける颯見くんに、湧き出てきそうになる想いを必死に抑え込みながら、頷いた。
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