消極的に一直線。【完】
ベッドから離れて、先生の椅子にポスッと座る颯見くん。



机に置かれたペン立てから手慣れた手つきでペンを取り、机の記録用紙にそれを滑らせていく。



颯見くんの姿を視界の端で捉えながら、ドクン、ドクン、と煩く鳴る鼓動を聞く。



だめだ。だめだ。



勝手にたかぶってしまう気持ちが虚しくて、ぎゅっと目を閉じた。




もう、好きでいることを辞めなきゃいけないのに、まだこれ以上好きになろうとしてる。



颯見くんは鈴葉ちゃんが好きなんだと、本人から釘を刺されたばかりなのに。



私はまだ懲りないのかな。



好きな人を好きでいるのを辞めるって、どうやったらできるんだろう。



颯見くんが近くにいても、もう何も感じない体にしてほしい。



ドクン、ドクン、と心臓の音が、いやでも私の耳を支配して、好き、好き、って訴えかけてくる。




もう止められそうにもないこの気持ちを、私はどこへやったらいいんだろう。



颯見くんを困らせたくなんかないのに。






鼻の奥がツンと痛くなって、じゅわ、と滲み出そうになるものを目の奥でとどめた。




よかった。
今、目を瞑っていなかったら、流れていってしまうところだった。



目を瞑っていてよかった。
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