消極的に一直線。【完】
もう何も考えるまいと、少し離れた距離から聞こえるペンの音に意識を集中させた。



少しすると、ペンの音が止まって、ペラッと紙をめくる音が聞こえる。



ペンを片手に記録用紙をめくって過去の記録を読んでいる颯見くんの姿が、脳裏に浮かんだ。



また、ペラッと紙をめくる音。



やることがなくなって意味もなく記録用紙を読んでいるんだろうな。



申し訳ないと思いながらも、帰っていいよ、とは言えない自分。



颯見くんを好きでいることを辞めなきゃいけないと思っているのに、矛盾してる。





ペラッとまた紙をめくる音が聞こえた後、放課後のチャイムが鳴った。





このチャイムが鳴ったら、どんなに長い終わりのホームルームも切り上げて解散になる。



下校する人。部活に行く人。



賑やかな声が、遠くから聞こえてくる。




颯見くんも、そろそろ部活へ行かなきゃいけない。



ジャラ、とペンをペン立てに入れる音が聞こえて、ああ、もう行くんだな、と少し寂しく思った。



カタ、と椅子を立つ音。



スタ、スタ、と上靴の音が聞こえて、部屋を出て行くのかと思ったら。


なぜかそれはこっちに向かってくる。






「もう寝た?」





不意にかけられた声に、ピクリと心臓が反応した。
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