消極的に一直線。【完】
私が横たわるベッドの脇で、靴の音が止まる。



今ベッドのすぐ横に颯見くんが立っていて、私を見ているんだと思ったら、緊張して目が開けられない。



「……寝てるか」



颯見くんの独り言が落ちてきて、また心臓を高鳴らせた。



もう完全に目を開けられなくなった状況で、全く颯見くんの音が聞こえなくなる。



まだベッドの脇にいるはずの颯見くんが、何をしていて、どこを見ているのか、全くわからない。



ドクン、ドクン、と心臓が脈を速めていく。



息をしていいのかもわからなくなって、薄く開いた口から浅い息を吐いた。




研ぎ澄まされた聴覚に、カサッとシャツの擦れる音が聞こえた。







サラっと。


額にかかった髪を指が撫でる感覚。





え。





電流が走ったみたいに心臓が大きく揺れて、思わず拳に力を込めた。



起きていることを悟られてはいけない一心で、閉じた瞼に力を入れすぎないように意識を配る。



指の感覚が離れていった後も、どんどんと鼓動は加速していく。





何が起こったんだろう。

今のは何だったんだろう。



加速した鼓動と混ざって、思考がぐるぐると落ち着かない。










「……やっぱり諦めらんねーよ」








不意に落ちてきた掠れた声が、すごく切なく聞こえて、また心臓が揺れた。
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