消極的に一直線。【完】
その言葉が鈴葉ちゃんに向けられたものだと気付くのはすぐで、それなのに半分の自分は何かを期待していて、高揚している。



違う。
鈴葉ちゃんのことを言ってるんだよ。



それが真実だと言い聞かせているのに、じゃあどうしてさっき私の髪に触れたの、ともう一つの心が邪魔をする。



また私は、都合の良いように颯見くんの行動を意味付けてしまおうとしている。



もう何度も同じ過ちを繰り返したのに。



それなのに、さっきの触れられた感触を思い出しては、その都合の良い解釈に溺れてしまいそうになる。



葛藤を渦巻かせる私の耳に、はぁ、と長い息の音が入ってきた。



「鈴葉に顔合わせずれーな……」



ズキ、と胸に太い棘が刺さった。



ほら。これが真実。



颯見くんの頭の中にいるのは鈴葉ちゃんだ。



颯見くんは、鈴葉ちゃんが真内くんを好きだと思っているから、顔を合わせづらいのかな。


それでも諦められないって思っているんだな。



揺るぎない颯見くんの想いの強さに気付かされて、また胸が苦しくなる。



勘違いして、恥ずかしい。
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