消極的に一直線。【完】
思わず口から出た言葉に自分で驚いた。



何を言ってるんだ。
そんなことを言ったら、鈴葉に気付かれてしまう。



告白ともとれる言葉を吐き出した自分の口を、固く結んで、鈴葉の様子を伺った。



「そうだよね、ずっと一緒だったからわかるか!」



鈴葉は何ともないような顔で笑っている。



よかった。気付かれていない。



そう安堵したのと同時に、なぜか残念に思っている自分がいる。



つくづく自分はどこまでもズルい人間。



「けどね、」



鈴葉は赤らめた顔を少し俯けて、紅茶のカップを揺する。



「気持ちを打ち明けて、今の関係が壊れるのが怖い」



揺すり続けるカップの中で、紅茶がポチャポチャと音を立てている。




その気持ちは、僕にも痛いほどわかった。
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