消極的に一直線。【完】
保健室には、もう佐藤さん達はいないようだった。


先生も外出中のようで、いない。



少しホッとしながら、保健室に入り消毒液や絆創膏のある棚を開ける。



そこにあった大きい傷用の絆創膏を1枚取り出して、名簿に名前と用件を書いた後、保健室をあとにした。



だけど、この絆創膏をどうやって寺泉さんに渡せばいいんだろう。



怪我してたから使ってください、って言って渡して、大丈夫かな。



そんなシミュレーションを頭の中で繰り返しながら、教室に入る。



だけど、教室には寺泉さんはいないようだった。



窓の外を見ながら楽しそうに話す佐藤さん達と、練習から帰ってきたクラスメート数人しかいない。



私は、そぅっと絆創膏を寺泉さんの机の上に置いた。



これで、せめて次練習するとき、こけても傷口が当たらない。



佐藤さんの傷は、どうなっただろう。



見るとやっぱり三人は窓の外を眺めながら楽しそうに話していて、私が声をかけてはいけない気がした。



三人でいないときに、佐藤さんだけのときに、謝ろう。



そう心に決めて、席に座った。
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