消極的に一直線。【完】
一瞬、時が止まったかのように、静寂が教室を襲った。




どうせ、「うるさい」とか「好きじゃない」とか否定してくると思っていた俺は、返す言葉が見つからずに止まっていた息を吐く。



俺は今、とんでもなく間抜けな顔で固まっているんだろう。




だってよ。こんなに顔を赤らめながら、迷いのない真剣な眼差しで、堂々と、好き、だと口にして。



俺の知らない嵐が、そこにいた。









嵐は、何も言わない俺から視線を外して、ガタ、ともう一度机に腰を落とした。




「でも俺、フラれてるから」




嵐の視線が、床に落ちる。





「もうこれ以上、哀咲を困らせたくない」







寂しい余韻を残して響いた嵐の声が、窓から吹いた風に消えた。
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