消極的に一直線。【完】
「なぁ哀咲さん、俺に英語教えてくんない?」



誰かが、そんなことを口にした。



「え、」



驚いて声を漏らして、思わず隣に顔を向けてしまった。



顔を向けたことで、視界に映った颯見くんの姿。



さっき私に英語を教えて欲しいと言った吉田くんを、唖然と見つめている。



何でもない颯見くんの姿に、胸の奥が高揚する。



好き、って鼓動が騒ぎ出す。



だめ。だめだめ。


颯見くんが好きなのは鈴葉ちゃんだから。

この前釘を刺されたから。

好きでいたら颯見くんを困らせてしまうから。



呪文のように心で唱えて、できるだけ颯見くんが目に映らないよう吉田くんだけに焦点をあてる。



「俺長文苦手なんだよな。ほらこれとかさ。なんかコツ的なの教えてよ」



吉田くんが、手に持っていた問題用紙の上を指差しながら差し出した。



どうしよう、何か答えなきゃ。

そう思った瞬間。



ガタッと颯見くんの机が揺れた。
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