消極的に一直線。【完】
賑やかな廊下を抜けて、階段を降り、渡り廊下の下を通って中庭に出た。



中庭にはまだあまり人が出てきていなくて、校舎からの賑やかな声が遠くに聞こえる。



そういえば以前、ここで朝羽くんと話をしたなぁ。



あまり晴れやかじゃない思い出が脳裏によぎって、少し身体が重くなる。






「雫ちゃん、ここに座って」



鈴葉ちゃんが、ベンチの上をパッパッと手で払った。



あの時朝羽くんと座ったのとは違う方にあるベンチ。



腰を下ろして、鈴葉ちゃんが座るだろう隣を手で掃く。



「あ、ううん。私はここでいいの」



鈴葉ちゃんはそう言って、ベンチに座る私の前に立った。



不思議に思って、鈴葉ちゃんの顔を見上げると、いつもは明るく笑っている鈴葉ちゃんが見たこともないような泣きそうな顔をしていて、思わず息を呑んだ。

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