消極的に一直線。【完】
「雫ちゃん。私、自分の事情と感情を振りかざして、雫ちゃんの気持ち考えずに、身勝手なことしてた」



鈴葉ちゃんは、少し震えた声で話し始めた。



私には何のことか思い当たることが何もなくて、鈴葉ちゃんの手を握ったまま続きを聞く。



「雫ちゃんの恋を応援するフリして、本当は自分が有利になろうとしてただけだったの」



鈴葉ちゃんが伝えようとしてくれている言葉を、必死にわかろうと思考を回すけれど、わかるようなわからないような、フワフワした理解しか得られない。



「雫ちゃんの恋が上手くいけば……って、たぶん純粋に雫ちゃんのことを思ってたわけじゃなくて、私、だから、あんな身勝手なこと……」



鈴葉ちゃんが言う、私の恋って、真内くんとのことなのかな。



たぶん、きっとそうだと思った。



だったら何かを謝ってくれているのも、たぶん誤解。

謝る必要のないことのような気がする。



だけど鈴葉ちゃんは言葉を続ける。



「雫ちゃんが真内くんと結ばれれば、私の恋に少しは可能性が出るんじゃないかって思ってたのかもしれない」



だんだんと顕になってきた鈴葉ちゃんの言葉を聞き取りながら。
ふと聞き流しそうになったフレーズが脳内にとどまった。
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