消極的に一直線。【完】
脳裏に浮かんだ、あの日の光景。



ひと気のない体育館倉庫の裏。

颯見くんの真っ直ぐな目。

好き、という言葉。



心臓がぎゅうっと締め付けられて、苦しくなる。



私の恋は、叶わない。



釘まで刺されてしまった。



颯見くんが好きなのは、鈴葉ちゃんだから。



ゆっくりと首を横に振ると、鈴葉ちゃんは「そうなんだ」と呟いた。





今日はとても天気がいい。



空の青が鮮やかに濃くて、照り付ける太陽が高い。




鈴葉ちゃんも、私と同じように辛い気持ちなのかな。



心臓が苦しくなったり、涙が出てきたり、してるのかな。




「鈴葉ちゃん、」



思わず、言いたくなった。



「鈴葉ちゃんには、いるよ。鈴葉ちゃんのこと、ずっと想ってる人」




近くでずっと鈴葉ちゃんを想ってる男子がいる。



だから、大丈夫だよ。



鈴葉ちゃんをフッた男子よりも、絶対、鈴葉ちゃんを幸せにしてくれる。



そう心の中で訴えながら、チクチクと胸に棘が刺さる痛みに、気付かないフリをした。



鈴葉ちゃんは私の言葉を聞いて、少し目を見開いてから、ふわっと笑った。
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