消極的に一直線。【完】
「あのね雫ちゃん、」



鈴葉ちゃんの形のいい二重の目が細く緩やかにカーブを描く。



「雫ちゃんのこと一途に想ってる人も、いるんだよ。私知ってるの」



そう言った鈴葉ちゃんに、「え?」と声を漏らすと、鈴葉ちゃんはまた、ふふ、と可愛く笑った。



私のことを想ってる人、って何のことだろう。



一瞬、私のことを好きな男子がいるのかな、なんて思いかけたけど、それはあまりに現実的じゃなくて、そういうことではないのだろうなと思った。



「雫ちゃんの気持ちにケリがついたら、ぜひ、その人のこと好きになってほしいな」



鈴葉ちゃんはそう言った後、あ、とまた口を開いた。



「ごめん、私また雫ちゃんの気持ち考えずに身勝手なこと言ってる」



あー、と頭を抱えながら首を振る鈴葉ちゃん。



「こんなこと言ってたら、また嵐に怒られちゃうなぁ」



ドクン、と。

突然鈴葉ちゃんの口から出てきた颯見くん名前に、鼓動が反応した。



いや、違う。
反応なんかしちゃいけない。



颯見くんは、この目の前にいる鈴葉ちゃんのことが好きなんだから。



鈴葉ちゃんが失恋をして、傷心中で、颯見くんにとっては今がきっとチャンスで。



だから、私が邪魔になるようなことがあっては、絶対駄目だから。



必死にそんなことを自分に言い聞かせていると、鈴葉ちゃんにきゅっと手を握られた。
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