消極的に一直線。【完】
グラウンドに点在するサッカー部のユニフォーム。



その間を走り回る、ジャージ姿の鈴葉ちゃんを見つけた。



――フラれるのわかってたけどちゃんと気持ち伝えてよかった



そう言って笑った鈴葉ちゃんの澄んだ顔を思い出した。



鈴葉ちゃんはもう、苦しくなったり、泣いたり、していないのかな。



鈴葉ちゃんの姿を追いかけていると、鈴葉ちゃんが一人の部員の前に止まった。



その部員――颯見くんが、クシャッと笑って鈴葉ちゃんと何か話している。



それを見て、ぎゅうっと心臓が強く掴まれる。




私は、まだ、苦しい。







「哀咲さんと銀! おつかい頼まれてくれない?」



押し潰れそうな脳内に、吉澄さんの明るい声が飛んできた。



窓から目を離して吉澄さんを見ると、ニコッと笑って封筒を差し出される。



「なんで俺」



それをスッと抜き取って、真内くんが椅子を立つ。



「だってー、哀咲さんと銀だけ明日花火合戦ズルいもーん」



なんだか楽しそうにそう言って、てへ、と笑った吉澄さん。



「この封筒のお金でお菓子と飲み物買ってきて。このままだと決算報告で来年の部費減らされちゃう」



手を合わせて可愛く首をかしげた吉澄さんに、ゆっくり頷いて席を立った。
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