消極的に一直線。【完】
吹奏楽の楽器の音が遠くに聞こえる、誰もいない廊下。



いつもは歩調を合わせて隣を歩いてくれる真内くんが、半歩先を歩いているのは、売店の場所すら知らない私を誘導するためなんだろう。



真内くんは何も言葉を発さないまま廊下を進んで、靴箱へ向かい、ローファーに履き替えて昇降口を出た。



横長に広がるグラウンドから、運動部の快活な声が蝉の声と混ざって飛んでくる。



そのグラウンド横を、校門のある方とは反対方向へ進んで行く。



外に売店があったんだなぁ、なんて思いながら、迷いのない真内くんの背中についていくと、その背中はグラウンド前の階段にたどり着いて止まった。




何も言わないまま、その階段に座り込んだ真内くん。



あれ、と思うけれど、「お菓子と飲み物買いに来たんじゃないんですか」なんて言葉も出なくて、立ち尽くす。



どうしたらいいんだろう。


私も座るべきなのかな。


それともここで待ってるから私が買ってこいという意味なのかな。



どうするべきなのか考えあぐねて、膝を小さく曲げ伸ばししていると、真内くんが体をひねって振り向いた。



「座ったら」



それだけ言って、また前を向く。



よくわからないまま、言われた通り、真内くんの隣に腰を落とした。
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