消極的に一直線。【完】
急に出された名前に、ぴくりと心臓が反応した。



その余韻みたいに、ドクドクと脈がうるさい。



振り回す、って何のことだろう。


私は真内くんに振り回された記憶はない。



何の話をしてるんだろう。



「なるほど」



隣から、真内くんの落ち着いた声が聞こえた。



颯見くんが怪訝そうな表情で、真内くんの方を見ている。



「あんたの幼なじみから、何か聞いたんだな」



幼なじみという言葉に少し不安を感じて、真内くんに視線を移した。



真内くんはチラリと私に視線を向けてから、また颯見くんを見上げる。



「誤解だ。俺が、こいつを振り回してるように見えるのか」



いつもより少しだけ流暢に流れた真内くんの低い声。






「……振り回していいなら、もうとっくに」









ポツリと零れるような低い声が耳に届いた瞬間。



ダンっと。



颯見くんが、手に持っていたボールを地面に叩きつけた。
< 402 / 516 >

この作品をシェア

pagetop