消極的に一直線。【完】
「ふざけんな!!」



颯見くんの荒い声が響いて、思わず肩を揺らした。



目を向けると、一瞬だけ颯見くんと目が合って、すぐ逸らされる。



「振り回してねーなら、何のつもりで――」


「あのーっ!」



颯見くんの声に被せて、グラウンドの奥から澄んだ声が飛んで来た。



その瞬間に、空気が変わる。



目を向けると、遠くから走ってくる鈴葉ちゃんらしき人影が小さく見えた。



「だーいじょーぶですかーっ?」



走りながら声を張り上げる鈴葉ちゃんに、口をつぐんだ颯見くんが振り返る。





きゅっと心臓が痛んだ。





颯見くんは今、鈴葉ちゃんの声を聞いて鼓動を鳴らしたりしたのかな。



走ってくる鈴葉ちゃんに、どんな表情を向けているのかな。



颯見くんの好きな人、だもんね。
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