消極的に一直線。【完】
「あ、雫ちゃんと真内くんだったんだ! ボール当たらなかった? 大丈夫?」



走ってきた鈴葉ちゃんの声が、すぐ近くから聞こえて、思わずピクリと肩が揺れた。



溺れかけていた思考が酸素を吸って正常に動けと命令を出す。



だけどまだ、余韻みたいに鼓動は激しいまま。



「ていうか、雫ちゃんと真内くん二人だけ? 他の部員は?」



鈴葉ちゃんの少し怪訝そうな声に、思わず振り向いた。



鈴葉ちゃんは、私が失恋した相手を真内くんだと思っている。



「あ、の、鈴葉ちゃん、」


「二人で話したかったから」



私の声に被せて、真内くんが答えた。



鈴葉ちゃんがますます怪訝そうな顔で、真内くんを見つめる。





「真内くん、ちょっと話があるから来て」



いつも明るくて可愛い笑顔の鈴葉ちゃんが、珍しく睨み上げるようにして真内くんに言った。
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