消極的に一直線。【完】
「雫ちゃん、急に話って……どうしたの?」
「あの、鈴葉ちゃんに、謝らなきゃいけないことが、あって」
あたしは今、校舎の陰で身を潜めながら、中庭で話す中雅鈴葉と雫の会話を聞いている。
これは、故意ではなくて偶然で。
夏休みの補習授業の帰り、補習に来なくてもいいはずの雫の姿が見えて、声をかけようと中庭に出たら、こんな現場に居合わせてしまった。
「鈴葉ちゃん、ごめんなさい」
「え、何? どうしたの?」
頭を下げる雫をチラリと盗み見ながら、まさか、颯見と付き合うことになってごめんなさい、とか言うじゃないだろうかとヒヤッとする。
「私、その、すごく、すごく、嫌な人間で、」
「ん? そんなことないと思うよ?」
「ううん、違う。あのね、私、」
そこまでいって、会話が止まる。
少し不安になって、また様子を覗き見ると、雫が泣いていた。
「雫ちゃん、どうしたの?」
中雅鈴葉が戸惑いながら、雫の手を握ってる。
「ごめ、なさい」
震える雫の声は、あたしの心まで切なく抉った。
「ほん、とは、泣いたら、ずるい、のに」
飛んでいってすぐにでも抱きしめてあたしが話を聞いてあげたいけど、何かを一生懸命に伝えようとしている雫を邪魔したくはない。
「あの、ね、私、」
「うん、なーに?」
「颯見くんと鈴葉ちゃん、が仲良いの、見て、嫌なこと、思ってしまったの」
そう言った雫が、また頭を下げたのを見て、あたしはまた心臓を締め付けられた。
「鈴葉ちゃんの、こと、大好き、なのに、ごめん、なさい」
思えば雫は、颯見と中雅鈴葉のことを考えた時、いつも辛そうな苦しそうな顔をしていた。
あれは純粋に嫉妬や自分の想いが叶わない苦しさだけじゃなくて、そういう罪悪感と葛藤して苦しかったんだろうな。
ほんと、雫らしい。こういうこと馬鹿正直に本人に謝っちゃうところも。
「あの、鈴葉ちゃんに、謝らなきゃいけないことが、あって」
あたしは今、校舎の陰で身を潜めながら、中庭で話す中雅鈴葉と雫の会話を聞いている。
これは、故意ではなくて偶然で。
夏休みの補習授業の帰り、補習に来なくてもいいはずの雫の姿が見えて、声をかけようと中庭に出たら、こんな現場に居合わせてしまった。
「鈴葉ちゃん、ごめんなさい」
「え、何? どうしたの?」
頭を下げる雫をチラリと盗み見ながら、まさか、颯見と付き合うことになってごめんなさい、とか言うじゃないだろうかとヒヤッとする。
「私、その、すごく、すごく、嫌な人間で、」
「ん? そんなことないと思うよ?」
「ううん、違う。あのね、私、」
そこまでいって、会話が止まる。
少し不安になって、また様子を覗き見ると、雫が泣いていた。
「雫ちゃん、どうしたの?」
中雅鈴葉が戸惑いながら、雫の手を握ってる。
「ごめ、なさい」
震える雫の声は、あたしの心まで切なく抉った。
「ほん、とは、泣いたら、ずるい、のに」
飛んでいってすぐにでも抱きしめてあたしが話を聞いてあげたいけど、何かを一生懸命に伝えようとしている雫を邪魔したくはない。
「あの、ね、私、」
「うん、なーに?」
「颯見くんと鈴葉ちゃん、が仲良いの、見て、嫌なこと、思ってしまったの」
そう言った雫が、また頭を下げたのを見て、あたしはまた心臓を締め付けられた。
「鈴葉ちゃんの、こと、大好き、なのに、ごめん、なさい」
思えば雫は、颯見と中雅鈴葉のことを考えた時、いつも辛そうな苦しそうな顔をしていた。
あれは純粋に嫉妬や自分の想いが叶わない苦しさだけじゃなくて、そういう罪悪感と葛藤して苦しかったんだろうな。
ほんと、雫らしい。こういうこと馬鹿正直に本人に謝っちゃうところも。