消極的に一直線。【完】
「雫ちゃん、お願い、顔を上げて」



だけどそういえば中雅鈴葉も、何かよくわからないことで馬鹿正直に雫に謝ったんだっけ。



「雫ちゃん、そんなこと、みんな当たり前だよ。私もこの前似たようなことで雫ちゃんに謝った。お互い様だよ」


「でも、」


「私はそんなことよりも、雫ちゃんが気後れせずに嵐と上手くいってくれる方が嬉しい」


「鈴葉、ちゃん、」


「付き合えてよかったね! てか、私こそ、真内くんのことが好きだと勘違いしててごめんね」


「ううん」


「私、今本当に嬉しいんだよ! 大好きな友達の雫ちゃんと、大好きな幼馴染の嵐が、想い合って付き合ってるんだから」


「鈴葉ちゃん……私、鈴葉ちゃんが、大好き、だよ。私ね、本当に、知ってる。鈴葉ちゃんのこと、想ってる人」


「ふふ、ちょっと期待しちゃう。あ、ほらもう嵐の部活終わるよ!」


「え、でも、まだ、」


「いいからほら。いってらっしゃい。私も用事で先生に呼ばれてるから行かなくちゃ」


「そっか……じゃあ……あの、ごめんね」



二人の会話を聞きながら、あたしはグラウンドの方へ向かうだろう雫にバレないように、身を屈めた。



パタパタと走っていく音が通り過ぎた後に、そっとまた中庭を覗き見る。



中雅鈴葉が、一人でベンチに座ったまま空を見上げていた。



あたしは、校舎の陰から身を出して、中雅鈴葉に近付いた。
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