消極的に一直線。【完】
「ねぇ」



声をかけると、はっと肩を揺らして中雅鈴葉が振り向いた。



その顔を見たら、どうやら、泣いてはなかったみたいだ。



どうせさっき雫に言ってた、先生に呼ばれてるっていうのも嘘なんだろう。



「隣、座るよ」



そう言うと、中雅鈴葉は「どうぞ」と笑った。



ベンチによいしょ、と腰を落とすと、夏真っ盛りの太陽が、ジリジリと肌を痛めつけてくる。



「あんたさ、雫に言わなくて良かったの?」


「え?」



突然のあたしの言葉に、キョトンと可愛らしくあたしを見る。



あーなんか、可愛いのってムカつく。



「颯見のことが好きだった、って」



そう言うと、中雅鈴葉は少し目を見開いた後に、ふふ、と笑った。



「やっぱり、寺泉さんは優しいね」


「は?」



全く答えにならないことを言われて、眉間にシワが寄る。



だけど中雅鈴葉はそんなの御構い無しで話を続けた。
< 450 / 516 >

この作品をシェア

pagetop