消極的に一直線。【完】
「私ね、嵐のこと好きだったよ」



いきなり話の飛んだ中雅鈴葉に、ぎょ、と目を向けると、またニコッと返される。



「嵐がずっと雫ちゃんを好きだったことも知ってたし、私はそれを知った上で嵐に告白してフラれた」


「は? 気付いてたんなら言ってよね! 雫すっごい苦しんだんだから」


「あ、えっと……ごめんね。私、雫ちゃんは真内くんが好きなんだと思ってたから……」



なるほど、それで一時期よく真内に絡みに来てたわけか。



「あとは、私も嵐を取られたくなかったのかも。性格悪いね」


「……うん、まぁそんなもんでしょ」


「だけど、告白してフラれたら、気持ちスッキリした」


「ふーん」


「まだ好きかと聞かれれば、好きなんだろうけど……」


「でしょーね」


「だけど、雫ちゃんと嵐が付き合うことになって、すごく嬉しい気持ちもほんとなの」



そう言って中雅鈴葉は、また空を見上げた。



あー、この子ってちょっと雫に似てるなぁ、なんてふと思う。



「あんたさ、朝羽とかどうなの?」


「え? カズ?」


「颯見よりも朝羽の方があんたには似合うよ」



そう言うと中雅鈴葉は、ふふ、と笑った。



「カズのことそんな風に考えたことなかった」


「まぁ、そのうち考えてみたら?」


「ふふ、何それ。それでカズ好きになっちゃったら、また私失恋しちゃうよ」



そう言って笑った中雅鈴葉は、朝羽の気持ちに全然気付いてないんだな。



朝羽も不憫。いい気味だ。
あたしのこと散々に言っといて。
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