消極的に一直線。【完】
「私、寺泉さんのこと、好きだなー」



中雅鈴葉がいきなり突拍子もないことを言い出したから、あたしはまた「は?」と声をあげた。



「あ、もちろん恋愛感情じゃないよ」


「当たり前でしょ!」


「ふふ、それより寺泉さんは今好きな人いないの?」


「あんたって結構話の脈絡飛ばすよね」


「まぁまぁいいから。好きな人は?」


「いないよ、最近彼氏と別れたし」


「え、それって関谷くん?」


「違うよ。その後付き合った人。浮気されてフッた」


「え、そうなんだ……」


「いや、あたしその人のこと好きじゃなかったんだよ」


「どういうこと?」



中雅鈴葉と話しながら思い出した。



彼氏と別れた時のこと。





彼氏が浮気してることを知って、だけど、悲しいとか悔しいとか嫉妬とか湧かなかった。



ちょうどその日は雫が風邪で学校を休んでて、お見舞いの電話を掛けた時に、訊いてみた。



――颯見が他の誰かのものになったら、どうする?



答えは返ってこなかったけど、雫が動揺して自分の中の嫉妬や何かと格闘しているのは、電話越しでも手に取るようにわかった。



好きなら、そうなるのが普通。



本当はそんなことしなくても、もうだいぶ前から気付いていたんだと思う。



あたしは、彼氏のことが好きじゃない。



きっと、その後押しが欲しかった。



それを雫に貰ったあたしは、潔く彼氏に別れようと電話して。


向こうもアッサリ受け入れてくれて終わり。



ほんとに薄っぺらい関係だった。
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