消極的に一直線。【完】
「……俺が、もらう」



そんな真内くんの低い声が聞こえた後、嵐が雫ちゃんの腕を引いたのが見えた。



はっと、胸の奥の何かが揺れる。



嵐の――顔。



悲痛に眉を寄せて、真内くんを鋭く睨みつけている。



こんな顔、知らない――。



立ち止まりそうになった足を無理やり動かして、嵐達の前まで来た。



わかりやすいぐらいピリピリした空気。



咄嗟に、わざと明るく振舞ってみる。



「あ、雫ちゃんと真内くんだったんだ! ボール当たらなかった? 大丈夫?」



たぶん、ボールは当たってないんだろうけど。



雫ちゃんの肩がピクリと揺れたのを見て、そういえば、と思い出した。



雫ちゃんと真内くんが同じ部活なのは知っているけど、どうしてこんな所で二人でいるんだろう。


確か、雫ちゃんは真内くんに失恋したはず。



雫ちゃんと二人で話した時の、雫ちゃんの苦しそうな顔を思い出して心臓が握りつぶされる。



フラれた人と二人でいるなんて、どれほど苦しいか。



だいたい、さっきの、真内くんの言葉は何?


雫ちゃんをフっておきながら、まだ振り回そうとしてるの?
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