消極的に一直線。【完】
やっと着いた。



早足で近付いて、大きな窓を覗き込んだ。



見えたのは学校の教室みたいな部屋。



学校のものより上等な机と椅子に、様々な制服を着た塾の生徒たちが座っている。



そのちょうど真ん中あたりの席に鈴葉の姿を見つけた。



ホワイトボードの前に立っていた先生らしき人が教室から出て行って、生徒たちも席から立ち上がる。



ちょうど授業が終わったところみたいだ。



帰る用意を始める生徒たちの表情は開放感に溢れていて、声は聞こえないけど教室が賑やかなのが伝わってくる。



鈴葉もすぐ出てくるだろうと思って待っていると、鞄に本を詰める鈴葉の席に、ガラの悪そうな男子集団が集まってきた。



鈴葉に何かを話しかける男子集団。


貼り付けたように困った笑顔を向ける鈴葉。



あー、もしかしてまたナンパか。



鈴葉はよく男子に声をかけられる。



幼なじみの俺から見ても、鈴葉は整った顔立ちで、人懐っこさも表情に滲み出ているから、声をかけやすいんだろうと思う。



ナンパされ慣れてる鈴葉は、普段なら自分で断って何とかする。



けど、今回みたいなガラの悪そうな相手で、しかも集団で来られると、そうも上手く断れないらしい。




助けに行くしかなさそうな状況を察して、中に入ることにした。
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