消極的に一直線。【完】
思わず口から出た言葉に、急に恥ずかしくなって、サッと指を離した。



何、してるんだ、俺。



思わず自分の髪に手を当てる。



ドクドクと鼓動が煩い。


顔が、火を噴くぐらい熱い。



“嵐は照れたり恥ずかしい時、そうやって髪に手を当てるよね”



だいぶ昔に鈴葉に言われた言葉を思い出した。




そりゃあ、照れるよ。恥ずかしいよ。




髪に当てた手を下ろして哀咲の顔を見ると、哀咲が起きる様子はなくて、安心した。



こうしてると、片想いの時と何も変わらなくて、この子が俺の彼女だなんて、ただの妄想なんじゃないかと思えてくる。



哀咲は、俺がこんな風に哀咲の顔眺めたり、心臓バクバク言わせてること、知らないんだろうな。



出会った時は、哀咲は俺の存在なんて知らなくて、俺だけが哀咲を見てたのに。


いつの間にか哀咲も俺のことを見てくれるようになっていた、なんて。



本当にこれは現実なのかって思うぐらい、奇跡みたいなことだ。



机の上を無造作にたゆんで広がる長い三つ編みを、そっと撫でる。



大切にしたい。哀咲のこと。

絶対大切にしたい。
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