消極的に一直線。【完】
――――


――――――


――――――――



脳内を揺るがすように響いたチャイムの音で、遠くにあった意識がだんだんと自分の元へ戻ってきた。



重い瞼をゆっくり開ける。



視界に映ったのは、少しオレンジがかった空を切り取る教室の窓。



あれ、どうして。



まだ覚醒しきれない思考をゆっくり動かしながら、体を起こす。







「あ、起きた」




耳に近い距離から柔らかな声が聞こえて、トクンと、心臓が大きく跳ねた。



ハッと窓から視線を移すと、前の席の椅子に跨って、椅子の背の上で頬杖をつく颯見くんの姿。



「おはよ」



クシャッと笑った颯見くんに、鼓動が揺れる。



「お、おは、おは、よう……?」


「ふは、寝起き」



笑った颯見くんに鼓動を鳴らしながら、この状況を把握しようと思考を巡らせる。



そうだ。
私、颯見くんが部活を終わるのを待っていて。

颯見くんのことを考えていたら課題が手につかなくて。



いつの間にか眠ってしまったの?



何気なく時計に目をやると、針は七時を大きく過ぎていた。



「あ、あれ、七時、私、ごめんなさいっ」



ガタッと立ち上がると、颯見くんはまた、ふは、と笑った。



「大丈夫」



そう言って、よいしょ、と跨っていた椅子から足を抜いて立ち上がる。



「帰ろっか」



ものすごく待たせてしまったはずなのに、溶かされそうなほど優しい声に、また私は心臓を高鳴らせた。



頷いて、広げていた問題集を片付けて、鞄を持って、颯見くんと教室を出る。
< 484 / 516 >

この作品をシェア

pagetop