消極的に一直線。【完】
「しーずく!」



ポン、と一瞬だけ肩に重みが乗って、ハッと振り返った。



「颯見と相変わらずラブラブじゃーん」



倖子ちゃんがニヤリと口角を横に伸ばす。



また頬に熱が集まったのがわかって、それを振り落とすように首を振った。



「照れてる照れてる」


「ち、ちが、」


「隠す必要なんてないじゃん? クラス公認カップルなんだから」


「あ、え、そ、」



言葉にならない声を漏らしていると、倖子ちゃんはフッと短く笑った。



「あたしは雫が幸せそうで嬉しいよ」



そう言った倖子ちゃんの声には、さっきまでのからかうような含みは無くなっていて。



「あ、ありが、と」



言うと、倖子ちゃんは嬉しそうに笑い返してくれた。



「教室戻ろ」



そう言って歩き出した倖子ちゃんに頷いて、隣を歩く。



倖子ちゃんは私が颯見くんに片思いしていた時、辛い時にいつも味方で応援してくれていた。



私の黒くて汚い感情も、全て知った上で、私の味方でいてくれた。



一緒に悲しんでくれて、一緒に喜んでくれて、一緒に泣いてくれて、一緒に笑ってくれる。



友達ができる前の私には想像つかなかった。



友達って、こんなに心強くて、温かい。


勿体無いぐらい。



大西さん達や、クラスの女子達も、話しかけてくれて嬉しくて楽しくて温かいけれど。
倖子ちゃんだけは、なんだかそれ以上に特別な気がする。



もちろん、颯見くんに感じる“特別”とは全然違うものだけれど。

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