消極的に一直線。【完】
「ねー雫、」



隣を歩く倖子ちゃんが、少し楽しそうに声を出した。



何だろう、と思って倖子ちゃんに目を向けると、倖子ちゃんはまたニヤリと口を延ばして私に視線を向ける。



「颯見とはどこまでいった?」


「へっ?」



予想外の言葉に、思わず間の抜けた声を漏らしてしまった。



倖子ちゃんの表情から見て、また何かからかうようなことを言われるのかと思っていたのに。



身構えていた頬から力が抜ける。



颯見くんと何処まで出かけたかな。



休みの日でも、颯見くんは部活やお店の手伝いがあって、なかなかデートというデートは出来ていないけど、一度だけ夏休みに花火を見に行ったなぁ。



「えっと、地元の夏祭り、に、行ったよ」



答えると、今度は倖子ちゃんが「へ?」と声を漏らした。



ポカン、と、まるで予想外の返事を貰ったみたいに私を見る倖子ちゃん。



あれ、私何かおかしなこと言ったのかな。



わからないまま倖子ちゃんの表情を伺っていると、倖子ちゃんは暫くして、あー、と声を漏らして笑った。



「違う違う、そうじゃなくて、」



なんだか面白そうに、くくく、息を吐く。







「手繋いだり、キスしたりさ、そういうのどこまで進んでんのかなーって意味」










倖子ちゃんの声が、鼓膜を伝って、心臓を大きく揺り動かした。
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