消極的に一直線。【完】
――――――……




教室に入ると、まだクラスの半数ぐらいが残っていて、ガヤガヤと楽しそうにお喋りを繰り広げている。



体育祭前は部活がないから、いつもとは違う特別感で、みんな浮き立っているみたいだった。



こういう空気は、少し好き。



そんななかで、ひときわ賑やかな男子の集団に目がいく。



男子に囲まれて、楽しそうに笑う颯見くん。



「あ! おかえり!」



パチっと視線が繋がって、ドキッと心臓が跳ねた。



さっきまで倖子ちゃんと話していたことが、また蘇る。



私、さっきまで、颯見くんとキスするところ、勝手に想像してしまってたんだ。



急に顔が見れなくなって俯くと、隣からクスッと倖子ちゃんの短い笑い声。



「雫、いいこと教えてあげよっか」



耳元で、倖子ちゃんの囁き声が、楽しそうに震えた。



「キスしたくなったらね、颯見の服の裾引っ張って、ジッと颯見の顔を見つめるんだよ」



私だけに聞こえた倖子ちゃんの声に、ボッと頬の奥が熱くなる。



「いい報告待ってるね~」



ポンポンと倖子ちゃんに肩を叩かれて顔を上げると、倖子ちゃんは楽しそうに席に戻っていった。
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