消極的に一直線。【完】
整列場所まで行き、整列担当の人の指示に従って並ぶと、もうすぐなんだ、と実感が湧いて少し緊張してきた。



「どうしよー、私すごい緊張してる」



私の気持ちを代弁したかのように、隣にいる佐藤さんが呟いた。



「大丈夫よ、佐藤。たとえ最下位でも、楽しんだらいいから」



大西さんが、少し緊張の色を浮かべた顔で、佐藤さんを励ます。



私もすごく緊張している。


だけど、それは嫌な緊張じゃなくて、もっと気持ちが高揚するような、いつもとは違ったそれ。



「頑張ろうね、雫」



倖子ちゃんにポンと肩を叩かれて、うん、と返事をした。



ちょうどそのタイミングで、パンパンと手を叩く音が響いた。


目を向けると、係りの人が拡声器を口に当てていた。



「百メートル走が終わったので、ムカデ競争出演者は今から入場します。前の人についていってください」



その声で、この場の空気が、一気に緊張に包まれる。



軽快で勇ましい音楽が流れ始めて、先頭から順番に前へと進みだした。



「わー、もうドキドキする!」



駆け足で進みながら、そう呟いた佐藤さんの顔は、すごく楽しそうで、私まで楽しみになった。





ムカデ競争は、一年、二年、三年、の順に、クラス対抗で百メートルを競争する。



運動場のレースに、内側から一年一組、一年二組、一年三組……と並んで、そこに板を置いていく。



板に足を結びつけて、立ち上がり、佐藤さんの肩に手を置いた。



「あたしらなら一位いける! やるよ!」



先頭の倖子ちゃんの掛け声に、大西さんと笹野さんと佐藤さんが、おー!、と叫んだ。
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