消極的に一直線。【完】
並んで座ると、大西さんが、うわーん、と声をあげて泣き出してしまった。



「佐藤もっ、みんなもっ、ほんと頑張ったよお~」



笹野さんは嬉しそうに笑いながら、震える大西さんの背中をさすっている。



倖子ちゃんは、鼻をすする音をたてながら、あー、と叫んだ。



「ムカデ競争程度の種目でこんな感動してんの、あたしらぐらいだよー」



ははっと笑って見せた倖子ちゃんの瞳は、うっすら涙が浮かんでいて、ゆらゆら揺れていた。



そんな姿を見ると、喉の奥に詰まっていたものが解けて、目頭が熱くなった。



「あーもー、絶対メイク落ちてる。ムカデ競争で泣くなんて思わなかったよ」



そう倖子ちゃんが言うと、俯いて泣いていた大西さんがバッと顔を上げた。



「うわっ、大西! それ、やばいって!」



笹野さんが叫んだのと同時に、私も一瞬身を引いた。



目の周りが真っ黒に染まっていて、黒い涙が頬を伝っている。



「マジで? やっぱり? あーもうほんとどうしよう」



黒い涙を流しながら焦りだす大西さんが、なんとなく面白くて、ふふっと笑ってしまった。



それに続いて、倖子ちゃんが大声で笑いだした。


笹野さんも、佐藤さんも、遠慮なく笑い声を漏らす。



「笑わないでよ。あ、雫ちゃんまで笑ってるじゃん! もう、早くトイレ行かせてよー」



そう言って、黒い涙を流しながら笑った大西さん。



すごく、楽しくて、嬉しくて、温かい。


こんな時間を、みんなは当たり前に過ごしてきたんだ。



友達がいることが当たり前ではなかった少し前までの私。
友達といるだけで、こんなに世界が違う。



胸から溢れ出て来てしまいそう。



楽しい。嬉しい。


叫び出したいぐらい。







競技は、いつの間にか三年生まで走り終わっていて、また、軽快な音楽が流れ、誘導されながら退場した。
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