消極的に一直線。【完】
退場門と書かれた場所をくぐると、整列していた人だまりが、ぶわっと広がっていく。



「あたし、トイレで化粧直ししてくる」



大西さんがそう言って、校舎の方に走って行くと、あたしも、と笹野さんと佐藤さんが追いかけていった。



「あー、あたしも化粧直ししなきゃ」



横に歩いていた倖子ちゃんがそう言って、ちらっと私に顔を向けた。



もしかしたら、私が一人になるのを気にしてくれているのかもしれない。


そんな気がして、大丈夫と言おうと息を吸い込んだ。






「哀咲！」




だけど、その空気は音として吐き出されることはなく、呑み込まれてしまった。



パタパタと後ろから近づいてくる足音。



振り向くと、想像していた通りの人がそこにいて、またトンと胸の奥で音が鳴った。



「え？　何で？　颯見じゃん」



倖子ちゃんが呟くのと同時ぐらいに、颯見くんが私の前で止まって、くしゃりと笑った。



「ムカデ競争、おめでとう！」



春風が、引き始めていた汗を、爽やかにさらっていく。



颯見くん、見ていてくれていたんだ。



そう思うと、なんだか、胸の奥がむず痒いような感覚になった。
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