消極的に一直線。【完】
体育祭の盛り上がりは凄まじく、全競技が終わって順位が発表され、片付けも終わり、教室に入っても、全く冷める様子はなかった。



結局、十二組は総合十八位、学年のなかでは総合二位という結果に終わった。



一番盛り上がった男子リレーは、朝羽くんと颯見くんのレースが迫力抜群で、見ていた私も、すごく興奮してしまった。



女子リレーもみんな速くて、だけど鈴葉ちゃんの速さはそのなかで一番。



颯見くんと鈴葉ちゃんのいる一年二組は、男子リレーも女子リレーも一位に輝き、十二組は女子が十位、男子が二位だった。



興奮が冷めきれず、ザワザワと騒ぐ教室内で、一人の男子が声をあげた。



「打ち上げしようぜ!」



その声に、やろうやろう、と、より一層、教室が盛り上がる。



「いったん家に帰って着替えて、六時に学校前集合な」



うおー、とクラスの男子たちが叫んで、女子たちはパチパチと拍手をする。



そんな様子を、窓際の一番後ろの席から、ぼんやりと眺めた。



打ち上げ。私も行っていいんだろうか。



行ってみたい。

でも、私なんかが行くと、盛り上がらなくなっちゃうかなぁ。



「雫も行くよね」



私の心の内を読み取ったかのように、いつの間にか私の隣にいた倖子ちゃんが言った。



渦巻いていた不安がふっと消える。



そっか。

私はもう、このクラスで一人じゃなくなったんだ。



賑やかに輝くクラスメートたちを、窓際の一番後ろの席から眺めて、その中にいる自分を妄想するのが、当たり前だった。



今でも、クラスメートの輪の中に入って一緒に騒いだりなんかは出来ていないけど、それでもクラスに友達がいるというだけで、こんなにも心強い。



「打ち上げは焼肉だぜー!」



提案した男子が叫ぶと、いえーい、と楽しそうな声が飛び交った。
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