消極的に一直線。【完】
それから、一度家に帰り、お母さんに打ち上げに行くことを話すと、お母さんは嬉しそうに頷いてくれた。



私服で誰かと遊びに行くなんてことは、今まで一度もなくて、どんな服を着ていったらいいのかわからない。



街中でよく見かける、スカートやブラウスみたいな、お洒落な服を持っていなかった私は、試行錯誤を重ねて、ジーパンにTシャツを着て行くことにした。



玄関を出る前に、お母さんに「そんな服装でいいの?」と訊かれて、少し不安になりながら、家を出て学校前へ向かった。



学校前へ着くと、もうほとんどの人が集まっているみたいで、倖子ちゃんが真っ先に声を掛けてくれた。



「雫、遅かったから来ないかと思ったじゃん」



倖子ちゃんは学校にいるときよりもくっきりと化粧をしていて、肩の空いたお洒落なTシャツにミニスカートを着ていて、いつもにも増して、すごく大人っぽく見えた。



後から声を掛けてくれた大西さんたちも、すごく可愛らしくて、まるで別人に会ったみたいに、不思議な気持ちになった。



学校のない時間に、私服で会うだけで、なんだか胸の奥がうごめくように高揚する。



「全員そろったみたいなんで、行きまーす」



提案者の男子が声を張り上げると、みんなが、はーい、と返事をして、動き出した。
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