消極的に一直線。【完】
目的の焼肉屋に入ると、むんとした熱気と、焼ける肉の香ばしい匂いに包まれた。



「いらっしゃいませー。あ、ご予約の前田さんご一行ですね!」



店員さんの威勢のいい声を聞いて、焼肉屋って予約とかしたりするんだなぁ、なんて思いながら、みんなについていく。



こちらです、と案内された二階にのぼると、そのフロアを貸切で使わせてくれるようで、私は倖子ちゃんや大西さんたちに呼ばれて、一番右奥のテーブルへ行った。



全員がテーブルに分かれて椅子に座ると、提案者の男子が立ち上がって、水の入ったコップを片手に持ち上げた。



「十二組のみなさん、体育祭お疲れ様! 遠慮なく肉頼めよー、派部先生が後日この分のお金出してくれるらしい」



まじかよー、なんていう声を受けながら、その男子は続ける。



「みんな乾杯するぞー! はい、コップ持ってー」



そう言うと、みんながテーブルにある水の入ったコップを持ち上げる。



私も、慌てて同じように目の前にあるコップを手にとった。



「んじゃ、かんぱーい!」



その男子がコップを高く上げると、みんなも続いて、かんぱーいと声をあげる。



「雫、かんぱい!」



隣に座っている倖子ちゃんがそう言って、私のコップに倖子ちゃんのそれをカチンと当てた。



「雫ちゃん、かんぱーい」

「私も~! 雫ちゃん、かんぱい!」

「かんぱーい」



大西さんたちともカチンとコップを当てて、テーブルにコップを戻す。





いつものクラスメート。


同じメンバーのはずなのに、教室にいるときとは少し違った雰囲気。



それは倖子ちゃんや大西さんたちも同じで、いつもよりもっと弾けているようにみえた。



私も、なんだか、そわそわと落ち着かなくて、すごく楽しい気分になる。
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