【短】君とホットケーキ

 卵や牛乳を出して、一つのボールに入れて掻き混ぜる。


 彼、晴斗先輩に用意する朝食。これが最後になるかもしれない。
 だから、わたしは自分が好きなホットケーキを作ることにした。


 本当なら、晴斗先輩の好きなものを作るんだろうけど。
 わたしは、媚を売ってまで好かれようなんて思わない。何か違う気がするから。


 そんなことをするわたしは、本当のわたしじゃないと思う。


 だから晴斗先輩が初めて褒めてくれたホットケーキにした。



「よし……」



 焼く時にいつも思う。どうして一枚目って、うまくいかないのかって。


 フライパンが熱すぎるとか、ホットプレートがいいとか、そういった情報は知っている。
 知っているからと言って上手く焼けるとは限らない。

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