夏の幻影 ~逢ヶ魔刻の出逢い~
公園
夏休みの終わり。
セミがうるさく暑さを訴える予備校の帰り道。
公園のベンチにいつも座っているお爺さんを今日も見つけた。
何をするまでもなく、ぼーっと一日をそこで過ごしている。
人通りがある場所で、誰かを待っているような、だれかに見つけて欲しいような感じでずっと座り続けている。
夏休みに入ってから毎日見るようになり、気になり始めてから1ヶ月以上になろうかというくらいに、思い切って話し掛けてみた。
「いつもここにいて、待ち合わせでもしてるんですか?」
お爺さんはハッってして顔をあげたが、僕の顔を見てがっかりしたようにため息をつき、少し自嘲の笑みを浮かべた。
「ある人が通るのを待っているんだ」
再び人の流れに目を向ける。
なんとなく立ち去るタイミングを逃し、側で一緒に眺めているとお爺さんは話し掛けてきた。
「今日はなんだか気分がいい。少し昔話に付き合ってくれるかね」
そう言ったお爺さんの顔は、雰囲気から感じ取っていたよりも随分若々しいものだった。
別にこれといって用事もなく、このまま家に帰っても勉強する気にもなれなかったので彼の話に付き合うことにした。
「いいですよ」
と、ベンチの隣に座ると、
「もう、あれから数十年が経ったんだ……」
ゆっくりと情景を思い浮かべるようにして、彼は話し出した。
セミがうるさく暑さを訴える予備校の帰り道。
公園のベンチにいつも座っているお爺さんを今日も見つけた。
何をするまでもなく、ぼーっと一日をそこで過ごしている。
人通りがある場所で、誰かを待っているような、だれかに見つけて欲しいような感じでずっと座り続けている。
夏休みに入ってから毎日見るようになり、気になり始めてから1ヶ月以上になろうかというくらいに、思い切って話し掛けてみた。
「いつもここにいて、待ち合わせでもしてるんですか?」
お爺さんはハッってして顔をあげたが、僕の顔を見てがっかりしたようにため息をつき、少し自嘲の笑みを浮かべた。
「ある人が通るのを待っているんだ」
再び人の流れに目を向ける。
なんとなく立ち去るタイミングを逃し、側で一緒に眺めているとお爺さんは話し掛けてきた。
「今日はなんだか気分がいい。少し昔話に付き合ってくれるかね」
そう言ったお爺さんの顔は、雰囲気から感じ取っていたよりも随分若々しいものだった。
別にこれといって用事もなく、このまま家に帰っても勉強する気にもなれなかったので彼の話に付き合うことにした。
「いいですよ」
と、ベンチの隣に座ると、
「もう、あれから数十年が経ったんだ……」
ゆっくりと情景を思い浮かべるようにして、彼は話し出した。
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