この幼なじみ要注意。
「い、いか……ないで…っ…」
とっさに動いた身体は知紘の腕を掴んでいた。
静かな廊下に弱く小さな自分の声。
今のわたしにはこれが精一杯……。
知紘の腕を掴む自分の手が小刻みに震えているのがわかる。
こんなことしたって、もう遅いって…
そう思うのに、止められなかった。
怖くて上を向くことができない。
下を向いて、ただ知紘の反応を待つだけ。
「ちょっとぉ、知紘くんは今からわたしと遊びに行くんだけど〜?その手離してよ」
ギュッとますます手に力が入る。
離したくないって……
渡したくないって……
心の中の自分が叫んでる……。
「……離して」
だけど、それは届くことはなくて。
拒むような低く冷たい声を拾った。
それと同時に瞳にうっすら溜まる涙
そして、簡単に手を振り払われた。
突き放されることが、こんなにも辛いなんて……。