この幼なじみ要注意。



「ご、ごめん……ありがとう…」


ほら、早くお礼を言って離れなくちゃいけないのに。

ギュッと知紘のセーターを握って、離れようとしない自分はなにを考えてるの……?


「どーしたの」

「……っ」



前までは、こんな風に名前を呼んでもらえて、誰よりも近くにいるのが当たり前で、触れるのは簡単な距離だったのに……。


ねぇ、どうして……


「ちひろ……っ」


手を伸ばせば今はこんなに近くにいるのに……どうしてわたしから離れていこうとするの……っ?


「っ……、そんな声出すとかズルイ」


伏せていた顔を上げると、余裕のなさそうな表情が読み取れた。


そのままふたりの視線が絡み合う。

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