赤髪の彼
「あ、ありがとう、ございます」



涙を流しながら俺に微笑んだ。



「泣くのか笑うのかどっちかにしろよ」



そう彼女の頭を撫でた。



「また会えたらお礼します!」



ペコッと頭を下げて降りてった。
俺らの高校の一つ前の駅で。



「また会えたら、か」



俺はまた会いたいって願ってた。
俺のことを怖がらなかった女ははじめてだったんだ。


チャリ通にしようなんて考えてたくせに
あの子にまた会いたくて俺はつぎの日からも電車通学を辞めなかった。



「今日もいないか」



痴漢に遭った彼女は時間を変えてしまったのかもしれない。
俺の心は完全に彼女に奪われてた。
あの日からずっと、あの泣きながら微笑んだ顔が忘れられない。


毎日願ってた。また会いたいって。
でも、そんな運良く現れるわけなんてなく。
会えないまま、でも想いは強くなる一方で。


俺は毎日彼女のことを考えながら過ごしてきた。

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