淫雨
上司と部下
「あ、雨里(あめり)ちゃん! 今日も来てたんだ」
「ここのランチが美味しいって教えてくれたのあなたじゃない」
「うん」
嬉しそうに頷くと、彼は空いていた向かいの席へ何の躊躇いもなく腰を下ろした。確かに、約束の相手はいないが。
「雨里ちゃんは日替わりランチどっち?」
「B」
「じゃあ俺もそうする」
「即答?」
「そりゃそうだよ。なんで?」
一寸でも考えただろうか。おかしくて噴き出してしまったわたしに、彼は一見澄ました顔立ちのくせに今の表情ときたらきょとんとして、然程長くもない睫毛を煌めかせた。
勿論、彼を好きなわたしが見たから、煌めいて見えただけのこと。きっと他人がきたら阿呆丸出しの子供じみた様子に映ったかもしれない。
「あのね、三崎くん。今は昼休み中でも仕事中なの。わたしたちは上司と部下なの。だからそんなに気安く呼ばないで。あとちゃんと敬語もね」
「えーオフィス外ならいいじゃん」
「三崎さん」
「…………わかりました。
八重樫さん」
「宜しい」
「ここのランチが美味しいって教えてくれたのあなたじゃない」
「うん」
嬉しそうに頷くと、彼は空いていた向かいの席へ何の躊躇いもなく腰を下ろした。確かに、約束の相手はいないが。
「雨里ちゃんは日替わりランチどっち?」
「B」
「じゃあ俺もそうする」
「即答?」
「そりゃそうだよ。なんで?」
一寸でも考えただろうか。おかしくて噴き出してしまったわたしに、彼は一見澄ました顔立ちのくせに今の表情ときたらきょとんとして、然程長くもない睫毛を煌めかせた。
勿論、彼を好きなわたしが見たから、煌めいて見えただけのこと。きっと他人がきたら阿呆丸出しの子供じみた様子に映ったかもしれない。
「あのね、三崎くん。今は昼休み中でも仕事中なの。わたしたちは上司と部下なの。だからそんなに気安く呼ばないで。あとちゃんと敬語もね」
「えーオフィス外ならいいじゃん」
「三崎さん」
「…………わかりました。
八重樫さん」
「宜しい」
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