凪君は私の隣で笑わない
said MIYU
紅葉が綺麗な赤に染まりきった、秋。
美優(みゆ)たちのクラスに転校生がやって来た。
「緒形灯(おがたあかり)です。よろしくお願いします!」
灯はクラス全員の視線を集めているのに、緊張する姿を見せず、満面の笑みで挨拶をした。
名前の通り明るい子だと、誰もに印象付けた。
灯が頭を下げ、教室内は拍手で包まれる。
すると、それを遮るように教室の後ろのドアが開いた。
廊下側の一番後ろの席である美優は、思わず肩をビクつかせた。
振り返れば、小学生のときから同じ学校に通う黒羽凪(くろばなぎ)が歩いている。
「おい、黒羽!なに堂々と遅刻してるんだ!」
凪は学校一の問題児というか、不良だ。
当然、先生から目の敵にされている。
凪は先生の言葉も無視し、窓際の一番後ろの席に座った。
そして、不機嫌そうに机の上に両足を上げる。
「黒羽!」
「うるせえな」
まだHRの途中なのに、わざわざ音を出して立ち、教室を出ていった。
「彼は……」
「ああ、悪いな、緒形。黒羽はなんというか……とにかく、関わらないほうがいいぞ」
「はあ……」
灯は困惑した表情を見せる。
「緒形の席は相川の隣、あそこだ」
先生は空いている、美優の隣の席を指さした。
凪からなるべく遠ざけるための席だろう。
「わかりました」
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