凪君は私の隣で笑わない
もちろん、振り返りたかった。
でも、もう自分には美優といる資格がない。
「なにやってんだ、俺……」
守るとか言っておきながら、結局美優を傷つけたのは自分自身。
今までしてきたことの無意味さを、実感する。
校舎裏に来ると、壁を力いっぱい殴った。
教室で男子生徒を殴った、何倍もの強さで。
凪の右拳は血まみれだ。
「うわぁあああ!」
なんとも言えない感情が込み上げ、凪は泣き叫んだ。
タイミングがいいのか悪いのか、ポツポツと雨が落ちる。
瞬く間に土砂降りとなり、凪を濡らしていった。
それからまもなくして、男子生徒を殴った犯人として凪を探していた先生が、凪を校舎に入れた。
そして、凪は二ヶ月の停学となった。
今回の件と、今までのことが重なり、長くなったのだ。
いいきっかけだ。
もう、美優には関わらない。
凪は、関わらないで美優を守っていくと心に決めた。
たとえそれが、無謀なことだとしても。
それからは美優と言葉を交わさなかった。
どれだけ話しかけられても、無視。
美優が悲しげな表情を見せる度に、どんどん心が傷んでいった。