凪君は私の隣で笑わない
もう、この背中に手が届かない距離になるのはやめたんだ。
隣で歩けるようになると、話題を探した。
「凪君、今日英単語のテストがあるの、知ってる?」
どうしても出てこなくて、結局これ。
なんで人ともっとたくさん話してこなかったか、後悔する。
「……」
そして、案の定凪は無言。
これくらいでめげてられない。
「凪君って、すごく頭がいいよね。いつも上位成績者の中に凪君の名前があって、すごいなあって思ってたの」
「……」
さすがに心が折れる。
いや、ここで諦めるわけにはいかない。
「頭のいい凪君なら、今日の小テストも余裕なんだろうなあ。私、バカだから……」
「それはない」
「え……」
このまま自虐ネタを続けようかと思っていたのに、凪が反応した。
それを望んでいたはずなのに、いざ凪が答えてくれると固まってしまう。
「でも、凪君より成績が低いのは確かだし……そうだ。一緒に勉強……」
「しない」
ですよね。
わかりきっていたが、本人の口から聞くとショックが大きい。
美優は次の話題に入れなくなってしまった。
「凪君は……私のこと、嫌い?」
「は?」
美優はしまったと言わんばかりに口をふさぐ。
こんなことを聞いてどうする。
もし、嫌いだと言われたら?
いくら諦めないと言っても、そう言われてしまえば終わりだ。